詩×船 Shi KAKERU2018.12.1(sat)-1(sun)

「詩×船」 ヒライス島の1000の詩集

あの島で読んだのは、確かに詩だった。
それらの多くは難解な作品だったが、
一読しただけで優れていると感じる作品も多かった。

優れていると感じた作品には共通して、
デイヴィット・マクリーン、ヨハネス・J・ハント、トーマス・スミス、
アニヤ・ローレンス、ダイサク・クマキなどの名前があった。

どの詩も本当に美しく、
詩を読んだときのあの高揚した気分を、
私は今でも忘れることが出来ない。

「ブルー・バウンティ号」「オルフェウス号」
初代船長・文学研究者 ライオネル・モーガン

2012年より不定期に開催し、様々なクリエイターとコラボレーションすることで、
新たな形で『詩』を表現してきた「詩×(シカケル)」。
第7回となる今回は、「東京国際文芸フェスティバル TOKYO」のサテライト企画として、「詩×船」を開催いたします。

かつてある島に人知れず残されていたという1000冊の詩集。
「詩×船」では、のちに「ヒライス島」と呼ばれるその島の1000の詩集になぞらって、
現代を生きる詩人たちの詩集はもちろん、詩人たちがセレクトした詩集や、
古書店・出版社の協力により、1000冊の詩集を集めました。

詩集は全て購入可能となっておりますので、ぜひ足をお運びください。

A TALE OF HIRAETH

ヒライス島の1000の詩集

1802年、海図作成の目的で、イギリス人のエドワード・ベイルマン隊長率いる18名の調査隊が北太平洋を航海していたところ、不思議な島を発見した。
その島の周りだけ、澄み切ったピンク色の海水で囲まれており、その島に上陸すると、そこには未知の光景が広がっていた。
見たことのない三日月形の木の実、七色の水、螺旋状の木々。
生物の存在は確認することが出来なかった。
驚くことに、その島には明らかに人工的につくられた小屋のような建物が存在した。
中には1000冊ほどの本があり、ベイルマン隊長は調査資料として数冊本を持ち帰ったが、1冊も解読することが出来なかった。

翌年の1803年、学者・研究者ら90名を乗せた「ブルー・バウンティ号」が出航、その島に再上陸し、島の調査と1000冊の本の解読を行った。本の半分はラテン語に近い言葉で書かれた本だったが、研究者たちの手でも解読することが出来なかった。
残りの半分は、多くがギリシャ語で書かれており、他にも英語、スペイン語、イタリア語、日本語などで書かれている本だった。
そして新たに分かったことで、ほぼそれらの本は「詩集」であった。
調査船に乗せていた食糧が底をつき、調査は約2ヶ月で終了した。
解読出来なかった本を中心に、約600冊を船に乗せ帰ったが、不慮の事故に合い、「ブルー・バウンティ号」は沈没し、本を全て失ってしまった。
船長・文学研究者のライオネル・モーガンのみが奇跡的に生還を果たした。

2年後の1805年、その島を再度調査すべく、新たな船「オルフェウス号」を出航させたが、その島を発見することは出来なかった。


— それから約100年間後
その島の話は受け継がれ、いつしかその島は「ヒライス(Hiraeth)島」(ウェールズ語で、かつて自分のまわりにいた人々や故郷へのやるせない郷愁や、まだ行ったことのない場所に故郷を求めるような、狂おしいほどの憧れを感じることを意味する言葉)と呼ばれるようになっていた。

1902年に世界各国の詩人や文化人たちを集めた文学の祭典「リブラルテ」が豪華客船となった「オルフェウス号」で行われ、そこで「ヒライス島」にあった1000冊の書庫の現代版を船内につくる企画が開催された。
参加者には、ヘルマン・ヘッセ、サン=テグジュペリ、アルベール・カミュ、サミュエル・ベケット、ジャン・コクトー、フランツ・カフカ、そしてパブロ・ピカソやサルバドール・ダリ、日本人は太宰治、与謝野晶子、佐川ちか、小津安二郎などが参加した。
自らの詩集はもちろん、参加者が選書した詩集なども置かれ、企画は大きな反響を呼び、大成功に終わった。
その後、「ヒライス島の1000の詩集」は、参加者が変わるなどして6度開催されているが、1927年を最後に、開催されることはなかった。

今回の「詩×船」では、現代版「ヒライス島の1000の詩集」をつくります。

現代を生きる詩人たちの詩集はもちろん、
詩人たちがセレクトした詩集や、古書店、出版社の協力を得て、1000の詩集を並べます。

全て購入可能となっております。どうぞ足をお運びください。

月光が海を裂くとき
ぼくは目撃するだろう。
切り立つ樹氷を。
その頂に白い鳥がとどまり、
ひととき風と鳴きかわすのを。

夜半、ぼくは見逃さない。
神の額のように
ふっくらと島がひらくのを。
水の花を走らせ、
呼吸の渦となる薄明を。

ぼくは、横たわる丘に記す。
闇の翼にむかって書く。
選ばれた言葉だけが
傷の終わりへ旅立つ。

船よ、何をはこぶのか。
星々の沈黙か。雪柳の孤独か。
吹き寄せる愛を待てずにいる。

Thomas Smith

炊かれた日々のほとりから
かじかんだ麒麟の群れが水平線を目指す

打ち付けられた十字架の残響が
緑の丘を低く飛ぶ

組み上げられた木材が
正方形の海に沈む

密林の岩岩に夜光虫が、蛾が
息を潜めて訪れを待つ

パプリカ

鳥かごの重さを抱えながら
雨粒の軌跡をたどっていく

今朝、馬車は教会へ着いた

DAISAKU KUMAKI

開催概要

日時:
2018.12.1(sat)-2(sun)
12:00〜21:00
国際文芸フェスティバルTOKYOの公式冊子では11月24日、25日と
お知らせしておりましたが、開催日が変更となりました。
会場:
BUoY 北千住
東京都足立区千住仲町49−11
Google Map
入場料:
無料

最新情報は「詩×」のTwitterアカウントよりご確認ください。

Orpheus Librarte 1902 12.1-2,2018 Shi × fune

参加詩人(順不同)

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出版社協力(順不同)

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古書店協力(順不同)

スタッフ

代表:
黒川武彦
企画:
石崎孝多黒川武彦文月悠光
デザイン:
今垣知沙子
WEBデザイン・開発:
本間裕基(factory)

協力

イラストレーション:
カシワイ
会場構成・什器製作:
佐藤研吾
会場音楽:
Norihito Suda